2020/07/17 15:38

(更新:2021.2.26)
前回のソニーに続いて、パナソニックのラジカセのうち2台についての体験と印象などを書いてみたいと思います。

◎RX-FS22

RX-FS22は、CD部を持たない、昔ながらの姿をした小型ステレオラジカセです。
4年前くらい前、どんな音がするのか興味があったので購入しました。量販店で6千円弱だったと思います。
結果から書くと予想とかなり違う製品で期待から外れていましたが、得るものもありました。

一番予想と違っていたのは、いわゆるHi-Fiオーディオを指向する製品ではなかったこと。
具体的には、再生音の周波数レンジが狭く、きちんと録音されたカセットテープを再生しても、いわゆるHi-Fiの音ではありません。高音域は10kHzに届いていなさそうで、低音も100Hz以下は出ていなさそうな、中音域寄りの音でした。
今どき珍しくトーンコントロールもあるので目一杯高音寄りにしても大勢に変化はありません。
思い余ってドルビーB入りのテープをそのままかけました。本来は高音ばかり強調された音が出るはずなのに、高音が出ないのは変わりなく、逆にびっくりしました。

取扱説明書を見ると、カセット部の周波数範囲は60~14000Hz(EIAJ)とあります。
ラジカセのカセット部で高音域が13kHzを超えて伸びていたら本来は相当に大したものです。前回取り上げたソニーのCFD-S401もCFD-RS501もカセット部の高音域は13kHz以内ですが、再生音を聴いてみるとなかなかに高音域まで伸びやかです。ならばRX-FS22から結構Hi-Fiな音が出そうですが、実際は異なりました。

カセット部の潜在的な能力はともかく、このラジカセのアンプ部はHi-Fi音質を目指していなさそうです。
このラジカセの目的はHi-Fiではなく、ラジオ、特にAM放送を明瞭に聞かせることに大きなポイントが置かれているように感じます。

RX-FS22でAM放送をかけると音声が明瞭であることが分かります。ニュース等でアナウンサーが話す声が聞き取りやすいです。
(FM放送でも語りが聞き取りやすいのですが、個人的に、FMでは音声の周波数レンジの狭さをストレスにも感じてしまいます・・。)

小型の筐体にも関わらず出力は2.5W+2.5Wで意外と高出力です。後述する上位機種のRX-D47は2W+2Wで下回っています。高出力はラジオの明瞭さにも寄与していると思います。

さらに、AM放送のカセットへの録音時、雑音軽減のための「ビートプルーフ」スイッチまでついています。6千円前後で販売されるラジカセにもかかわらず、ラジオ関連は今どき珍しいくらい手厚い対応だと思います。

そのような製品で、意外?にも良好なのはカセット部の走行性能です。
Hi-Fi志向ではない低価格のラジカセなら、他のメーカーだったらコストダウンのためにメロメロな走行系を導入していてもおかしくないところ、パナソニックは違います。最終的な再生音の周波数レンジは狭いけれど、ピアノやクラリネットなど回転ムラに弱い器楽の演奏も安心できる走行系でした。

この時、「1万円しないRX-FS22のカセット部の走行系がこれだけ安定しているなら、上位機種のRX-D47は期待できるのではないか?」と予想を立てましたが、これは当たりでした。

現在、このRX-FS22は、ラジオ部を電子チューナー化してワイドFMにも対応したRX-FS27にモデルが更新されましたが、筐体全体のデザインや基本的なスペック、価格帯などはFS22から引き継がれています。

もし、コンパクトなラジカセで、(高音質を追求するより)AMラジオ等を明瞭に聞くことや、語学学習などが主目的なら、現行のRX-FS27も試してみる価値はあると思います。
(2021.2.26追記:RX-FS27も昨年で生産終了しました。堅実な製品がまた一つなくなってしまったのは残念です。)

◎RX-D47-S
上記のRX-FS22を購入し(て、すぐに手放し)た数か月後、RX-D47を購入しました。

この製品は外観がソニーのCFD-RS501に似ている気がします。
RX-D47はパナソニックの現行CDラジカセの最上位で、位置づけはCFD-RS501と同様ですが、リモコンなし、SDカード等によるデジタルデータの録再にも対応せず、一段地味な存在かもしれません。
ですが、基本的な性能面ではCFD-RS501に負けていないと思います。

スピーカーから聞こえてくる音質は、ソニーCFD-RS501に比べると、若干暗めのように感じますが、考えようによっては余分な演出がないとも言えそうです。クラシック系の音源では、こちらの方が素直な響きに感じることがあります。また、中低音域の情報量が案外豊富だったりもします。

購入当初、カセット部に手持ちのテープをかけて試したところ、安定性は現行ラジカセ製品の中で高い水準に位置すると感じました。
ピアノやクラリネット、サックスといった回転ムラに弱い器楽曲の演奏でも、元のデッキで再生した時のような安定感がある、と感じられることもあります。音質面でも、録音されている情報が十分表現されていると感じる、周波数特性の広さを感じられます。

RX-D47にはトーンコントロールが4種類用意されています。
・EQ1:HEAVY低音と高音をブースト、
・EQ2:CLEAR:高音をブースト、
・EQ3:SOFT:低音をブースト、
・EQ4:VOCAL:中音域を強調。
さらにトーンコントロールOffがあり、計5段階で音質を調節できます。結構手厚いです。

また、音の良いヘッドフォンで聴くと、アンプ部が結構よく作り込まれていることが分かると思います。
ラジカセですので、オーディオコンポほど潤沢に各部にコストがかけられませんが、それでもヘッドフォンを使えば、筐体のコストやスペースなどの制約からある程度解放されます。良質なヘッドフォンならこの製品のアンプ部の性能を十分引き出せると思います。

現行ラジカセ中ではカセット部の安定性が高い製品なので、本当は録音レベルのマニュアル調整機能がほしいところです。それがあれば、ポピュラー音楽などはカセットデッキの代わりに録音にも積極的に使えるのに、と思います。

また、未確認の情報ですが、3年くらい前の「カセットストアデイ」における国内イベントで、登場した某DJさんがターンテーブルの代わりにラジカセを2台使っていましたが、これら2台のラジカセは、外観からしてRX-D47だったと思います。

音質やカセット部の安定感から、この製品がプロの仕事の相方に選ばれてもそんなに不思議ではないと思います。