2025/08/03 19:48
2025.8.3
向実庵店主 舩生好幸
近年、業務用カセットテープのトレンドとして、米国NAC(National Audio Company)社の磁気テープに、イタリアのMUSICBOX社のカセットハーフ(シェル)、という組み合わせが数多く流通している模様です。
特に、近年リリースされる国内アーティストのミュージックテープやカセットアルバムに占める上記のシェアは、実質トップではないか、と思われます。
また、これら最新の業務用カセットテープは、当店にて、「第三世代黒ハーフ/白ハーフカセットテープ」製品としてブランクカセット製品にも採用しています。
〇米国NAC社における磁気テープ自社開発の経緯など
NAC社のHPによると、ミュージックテープ製造が主要事業であるNAC社は2016年頃、韓国メーカーのカセットテープ用磁気テープ生産からの撤退により高品質な磁気テープ供給が途絶え、事業の継続が危ぶまれる状況に陥りました。この時、経営者スティーブ・ステップ氏の決断により、他社で用済みとなっていた磁気テープ製造設備を買い取り、併せて経験ある技術者を雇用し、往年のカセットテープ全盛期のような高品質の磁気テープの自社開発・製造を開始した、とのことです。
最新の業務用ノーマルポジションテープ(ブランクカセットFerroMaster 256として製品化もされています)は、MOLや再生出力が十分高く、又、レコーダーのプリセットのバイアス値で、しっかりした低音域、そして高音域まで伸びやかでフラットなトーンカーブが得られ、デジタル音源の情報量を余すところなく収録・再現できます。
NAC社に限らず、同様に高品質な磁気テープを必要とするミュージックテープ製造メーカーは今も世界中に存在します。その理由から、ここ数年のうちに同社の磁気テープが広く普及したということと思われます。
*ちなみにNAC社ではハイポジションテープも製造しています。現在、世界中に流通するハイポジションテープを採用したミュージックテープ、或いは一部はブランクカセットテープとして、大きなシェアを占めている模様です。

(上記:NAC社のブランクカセット製品:FerroMaster 256(ノーマル)、STUDIO MASTER 799(ハイポジション))
〇第三世代カセットテープ・使いこなしのポイント
ここからは当店で取り扱う「第三世代黒ハーフ/白ハーフカセットテープ」製品の上手な使いこなしのためのポイントをご紹介します。
(下記は、使用するレコーダーやデッキの特性によっても変化します。気にならない・目立たない場合もあると思いますので、その場合は従来の製品の通りにご使用いただけばよろしいと思います。)
注意点として、使い始めに磁気テープの粉落ちがやや多いことと、同様に最初のうちカセットハーフ内のローラーなどの抵抗が若干ある模様で、ドロップアウトや音のカスレが目立つ場合がありうることです。
いずれも、録音・再生に供する前に1,2往復程度、再生モードで走行させてテープを走行系になじませる(エイジング)ことや、レコーダーのヘッド周りを清掃することで対処できます。
*再生モードで走行させると時間がかかるので、早送り・巻き戻しではどうか、ともお考えになると思います。
早送り・巻き戻しでは本来の再生時の速度よりエイジングの効果は少ない模様です。
とりあえず早送り・巻き戻しの後にA・B面に録音して(=1往復の定速走行)、満足できない要素があれば再度録音し直す、という対応でもよいかもしれません。
特に使い始めの、5~6往復程度の走行が済んでいないカセットテープは、粉落ちが目立つ場合があります。
粉落ちによりヘッドが汚れると、特に高音域の録音再生に悪影響が生じたり、L/Rの出力バランスが悪くなる場合があります。
録音の際は特に注意して、A面の録音が済んだら、ヘッド周りの粉落ちの具合を確認し、目立つようなら綿棒で乾拭きを行ってからB面の録音を行う、といったひと手間をかけることで、テープが有するHi-Fi音質の性能が十分に発揮できると思います。
*ご参考ブログ:


(上記:当店の「第三世代黒ハーフ/白ハーフカセットテープ」製品より)
最新のカセットテープを上手に使いこなし、楽しい・感動的な音楽体験につなげていただければ、と思います。
(向実庵店主)