2025/04/12 14:53

ネットショップ向実庵店主 
舩生好幸

新しいカセットテープに録音することは、結構楽しみな時間でありますが、カセットテープによっては、
・たびたび瞬間的な音抜け(ドロップアウト)が生じる、
・高音域がカスレたり、ささくれたように荒れて録音される
・走行中、テープが所々でスリップするのか、瞬間的に「息継ぎ」しているように録音される

といった不具合が起こることもありました。
(特にヘッドフォンで聴くとき、不具合が目立ちました。)

きちんとした性能で、コンディションも問題ないカセットデッキ(近年ではティアックV-1050やV-6030S)を使用し、
ヘッドやキャプスタン、ピンチローラーは清掃しておき、
セオリー通り、テープには早送り/巻き戻しを往復で行い、巻きを整えたはずのカセットテープでもそれは起こりました。

そのたび、「この製品は外れ」「どうしてこのような不具合の出る製品を販売しているのだろう?」等と思い、不具合のあったカセットテープをボツにしていましたが、
最近になって、これらのカセットテープは不良品ではなく、
単にエイジング(慣らし走行)が不足していただけであることに、徐々に気がつくようになりました。

〇「おろしたてのカセットテープ」に不具合が感じられたらエイジング不足を疑って
買ってきたまま、レコーダーにセットするだけで問題なく録音できる、或いは、
1往復、テープに早送り/巻き戻しを行うことで、十分に安定走行し、高品質に録音できるカセットテープはそれで問題ありません。

しかし、まだ「おろしたて」もしくはそれに近い状態のカセットテープに、冒頭に書いたような不具合が感じられたら、まだ慣らし走行=エイジングが不足しているかも、と疑って、以下の処置を行ってみてください。
走行が安定して、格段に良い音で録音できる可能性が高まると思います。

〇行うことは簡単です
再生モードでテープをA面→B面へと1往復、走行させてください。
(再生中は待っているだけですので、ほかのことを行っていて結構です。)
もし念入りにエイジングするなら、2-3往復走行させると、より確実です。

上記のエイジング走行後はヘッドやキャプスタン、ピンチローラーの汚れ具合を確認し、必要があればクリーニングを行って、その後改めて録音してみてください。

十分にエイジングできた状態で録音すると、
ドロップアウトや音のカスレやささくれ等は格段に減少、テープ走行はスムーズになり、高品質な録音ができるようになると思います。

これは、60分とか90分など一定時間、本来の再生速度でテープを走行させることで、
カセットハーフ内のテープを巻き取るハブや、テープの通り道にあるローラーが滑らかに回るようになり、ハブを両側から支えるスリップシートも過剰な抵抗が減り、走行に適した状態に整えられるためであろうと思います。

私自身「時間が惜しいので慣らしは早送り・巻き戻しを1往復、これで十分だろう?」
と長年思っていたわけですが、製品によっては答えはNo。
上記の不具合をおこすカセットには、再生速度での慣らし走行が必要、ということのようです。

また、カセットテープのエイジングの効果は、デュアルキャプスタン構成のデッキよりも、基本的なシングルキャプスタン構成のレコーダーやデッキの方が明確に「効く」と思います。

(デュアルキャプスタン構成のデッキでは、録音・再生ヘッドの前後でテープにしっかりとテンションがかけられるので、十分なエイジングなしのカセットテープでも安定走行の可能性が高いです。)

さらに、このエイジング=慣らし走行は、使用機器に高音質を求めるものではありませんので、
カセットデッキ以外に安価なカセットプレーヤーやラジカセなどがあるならそちらで行う方が、
今や「貴重な資源」であるカセットデッキを消耗させずにすみます。
(上記画像:過去数年間に、走行が不安定、ドロップアウトが多い、などの理由でボツにしていたカセットテープの例。いずれも画像内のポータブルプレーヤーで再生モードで1往復ないしはそれ以上、改めて慣らし走行を行い、カセットデッキ(ティアックV-1050)で録音し直したところ、格段に安定した品質で録音できました。)

〇まとめ・ボツにしていたカセットもエイジングすることで高品質な録音ができるかも

本ブログ冒頭のように、私同様のお悩みがあった方は、録音の際はその前にもうひと手間かけてみてください。
ボツにしていたカセットテープが手元にあれば、上記のエイジングを試してみてください。

目からウロコ、録音の品質が格段に向上、という場合もあると思います。