2023/04/04 16:28

(最終更新:2023.12.28)

先ごろ、新しい製品であるRTM C60 Type One(以下、RTM-C60)をテストした際、比較のためにマクセルUR-60にも同じような条件で録音して、結果を比較しております。

(上記画像:マクセルUR-60&90)

同じ音楽ソースを録音して音質や走行安定性等、比較してみると、RTM-C60、或いはその前作であるfox-C60がより良い結果となるのですが、UR-60との差は僅差です。

(上記画像:RTM C60 Type One(手前)とfox C60)

正直なところRTM-C60とUR-60の価格程には大きな差はありません。

一定水準以上のレコーダーを使い、録音レベル等に注意を払って録音すると、URもRTM-C60やfox-C60に迫るような、高品質の録音が出来ます。

〇マクセルURのご紹介・改めて
マクセルURは、現在、国内で販売される数少ないメーカー製カセットテープです。
ピュアクリスタル磁性体採用による高域感度の高さや高域MOLの広さを実現。リーズナブルな価格を維持しつつ、音楽用カセットテープとしての実力にも磨きをかけた製品です。

2020年3月、URには新しいパッケージデザインが採用されましたが、同時にテープ自体にもアップデートが施されています。
このアップデートにより、再生出力が向上(当店の実測で2dB程度)し、音質面でも中低音域に厚みが増しています。従来からの高音域のゆとりは維持しつつ、アナログらしい暖かみや深みが向上しました。

これは現在のアナログ録音メディアの在り方を見据えた、正常進化といえると思います。

〇UR=現行カセットデッキの”リファレンス”の強み?
今回のテストで特に印象深かったのは、RTM-C60とともにURを現行のカセットデッキ・ティアックW-1200でテストを行った際のことです。

(上記画像:ティアック W-1200 ダブルカセットデッキ)

ティアックW-1200は現在新品で買える数少ないカセットデッキの一つです。
カセット部を2つ持つことから、録音済みカセットテープを再生する場合、デッキ1で相性が悪く音がこもるような場合でも、デッキ2なら高音まできちんと出る、といった事象も起こり得ます。(2つのカセット部はわずかにヘッドの取り付け角度などに違いを設けているのか、と感じられる場合があります。)

そのためW-1200は、シングルデッキよりも多くのカセットテープを良好に再生できる可能性が高い側面があります。

一方、レコーダーとして見たとき、W-1200は走行系に現行のラジカセ水準のパーツを使用せざるを得ない事情からか、きちんとテープの良さを発揮し、走行安定性も一定程度確保しながら録音するためには、カセットテープを選ぶ傾向がある。そのように思われます。

RTM-C60やfox-C60程のグレードの高い製品であれば、テープの水準も高く、ハーフも力が入っています。特にRTM-C60ではテープガイド部に専用パーツを組み込む程です。

(上記画像:RTM C60。下部の黒い部品が「ブリッジ」=テープガイド部分

これらの製品であれば、W-1200でも周波数特性や走行安定性の面でもかなり高水準の録音が出来ます。

その一方、RTM-C60やfox-C60に次いで良好な結果が出るのは、マクセルURであったりします。

URは数少ない日本メーカーの現行製品ゆえ、W-1200などティアックの現行カセットデッキのリファレンステープになっていることでしょう。今回のテスト中、W-1200は、URの良さを確実に引き出せるようチューニングされている印象を受けました。

〇安価であることを誤解せず、安価で買えることに感謝
筆者が10代半ばだった40年以上前、音楽録音にはTDKのADやマクセルのUD、ソニーのBHFといったLHクラスの製品(もしくはその上のグレードの製品)が必要、という認識でした。
その少し後に登場したマクセルURは、UDよりベーシックなグレードながら音楽録音に使えるハイC/Pな製品という位置づけでした。
何度かの改良を経て、現在のURは、当時のUDやAD,BHFなどとほぼ同等のパフォーマンスを発揮していると思います。

(上記画像:マクセルUR-90)

流通量が減り、物価が上がっている中でもURが200円~300円台で販売されているのは、ひとえにマクセル株式会社様の良心であろうと思います。これが海外のメーカー等なら現状の2倍以上の価格で販売してもおかしくないと思います。

URに関して「安価だからパフォーマンスが低い」などと先入観を持つとしたら、それは大変な誤解につながるであろうと思います。
現在もURのような高水準の製品を安価で購入できることに感謝しなければ、と改めて思います。

(投稿:舩生好幸・向実庵店主)


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