2021/07/30 14:14

〇ある雑誌記事より
少々前ですが、ある雑誌で今も印象に残る記事を読みました。

それは2016年刊行の「カセットテープ時代」((株)音楽出版社・刊)という雑誌の、「カセットテープには本来CDと遜色ない音質で録音/再生できる能力がある」という趣旨の記事です。(この本をお持ちでしたらP.102をご参照ください。)

記事の要点をご紹介しますと、
まず「カセットテープ本来の音質や性能を知るためには、ある程度高水準のカセットデッキが必要」とのこと。こうしたカセットデッキを使い、録音時に、バイアスやイコライザー、録音レベルを適正に設定する。そしてドルビーノイズリダクションを利用する際も、録音感度を調整しつつ録音する。そして出来上がったカセットテープを正しい再生方法で聴けば、「一般的なイメージとかけ離れた、温かみがありながらもノイズが少なく澄んだサウンド」が得られる。
そういう内容と理解しました。

以前は筆者自身も、カセットテープはCDやアナログレコード等より音質が劣るもの、という固定観念が心のどこかにありましたので、この記事を読んだときは結構な衝撃を受けました。

ですが時間が経ち、今ならこの記事の主張は理にかなったこととして理解できる気がします。

〇ミュージックテープで体験した、カセットテープの良い音(再録)
筆者がここ数年で特に、カセットテープの潜在能力の高さを実感したのは、ポピュラーやジャズなどのアルバムをミュージックテープで聴いたときでした。
ブログ「市販のミュージックテープ体験」(2020.5.25)では、ダンス音楽のミュージックテープの印象について、以下のように書きました。
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聴いてみて音の良さに驚きました。
音にカセットテープの「悪いイメージ」がありません。
◎音質が良く、ノイズが少ない。
◎ベースラインのボリューム感が十分で、ノリがよい
・デジタル音源で起こりがちな、高音域偏重のバランスと異なる。
・低音から高音域までバランスが程よく、心地よく、聴き疲れしにくい音質。
等々。
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理想的な環境で製造(録音)されるミュージックテープなら、カセットテープの潜在能力を高度に発揮できる録音が可能だと思います。そのためカセットテープ製品の中でも良好な音質を体験しやすいのではないかと思います。

〇ノーマルポジションカセットの潜在能力
特に強調したい点は、ミュージックテープの多くはノーマルポジションカセットだということ。前項中の2020年5月のブログで取り上げたダンス音楽のミュージックテープもそうです。
それらミュージックテープに使われる磁気テープのグレードは、かつてのブランクカセットテープで言えば、TDK-AEやAD、ソニーHFやHF-S、マクセルURやUDⅠなど、音楽用カセットの中でも普通クラスの水準でしょう。

ですがこれは、普通クラスのノーマルポジションカセットテープの潜在能力の高さを表していると思います。

もちろん、より静粛性の高いハイポジションや、さらに大入力に強くダイナミックレンジがより大きく取れるメタルポジションは、ノーマルポジションカセットよりも有利な点が多いです。しかしその一方、ノーマルポジションだから音が悪い、という固定観念があったとしたら、相当もったいないことではないか、と思います。
特に、「CD対応」が当たり前になった90年代以降、普及価格帯のノーマルポジションカセットでも、その周波数特性はデジタル音源に対応できる広さを獲得できていますので。

〇まとめ
冒頭の引用のとおり、一定水準以上のカセットデッキが必要な点などもあり、カセットテープの潜在能力を十分に引き出す条件は、年々ハードルが上がっている状況です。

ですが一方で、ノーマルポジションであってもカセットテープには結構な潜在能力がある、改めてそう認識すると、お手持ちのカセットテープのコレクションに、今からでも新しい発見ができる可能性がある気がします。

また最後に、我田引水となり恐縮ですが、当店で扱うノーマルポジションカセットテープの製品も、「カセットテープには潜在能力がある」その視点からご覧いただけると、大変ありがたく存じます。