2020/11/04 16:16

以前、市販のミュージックテープについて、一見すると簡素な外観ながら、鮮度の高い高品質な音楽が聴けて驚いた旨をこのブログに投稿しました。(2020.5.25「市販のミュージックテープ体験」

(上記画像:件のオムニバス・ミュージックテープ「QUEEN dance traxxⅠ」)

この時取り上げたミュージックテープ(上の画像)は1996年の作品で、ノイズリダクション(ドルビーB)入りの製品でした。

ご存じの方も多いと思いますが、ドルビーB入りのテープは静粛性に優れていますが、再生する時にもドルビーBをONにしないと正しいバランスで聴けません。これは現在販売されているラジカセ等には搭載されていない機能のため、これら年代物のミュージックテープを再生するにはノイズリダクション機能のあるカセットデッキ、或いはヴィンテージラジカセ等が必要です。

一方、2010年代以降に発表されるミュージックテープは、時代が変わって主な再生機器はラジカセ等であることを考慮しているのでしょう、ドルビーB等のノイズリダクションが入っていないものが主流になっています。

筆者的に、このタイプの製品は、従来のノイズリダクション入り製品からのグレードダウン、品質の低下というイメージがありました。
しかし、この10月以降、それらノイズリダクションの入っていないミュージックテープのいくつかを聴いて、必ずしもグレードダウンではなく、案外「ノイズリダクション不要」といえる状況になっているのではないか、と考えが変わってきました。

(画像:上記のように考えるきっかけとなったミュージックテープ。いずれもノイズリダクションOffの製品です。)

ノイズリダクションがオフですと、カセットの再生をスタートさせた最初の余白部分で少し、ヒスノイズが聞こえますが一般的なカセットデッキで録音した時ほどではありません。テープ自体のノイズレベルがノーマルテープにもかかわらず低いです。
また、一般にミュージックテープの録音レベルは高めな傾向もあって、演奏が始まると、もうヒスノイズは聴こえず、気になりません。
これなら、特にヴォーカル中心のポピュラー音楽は、カセットデッキでなくても、上位機種のラジカセでも相当に高品質な再生音が期待できます。

(下の画像:パナソニックRX-D47。今回、ミュージックテープ試聴用ラジカセは、主にこの機種を使いました。特に性能の高いヘッドフォンで聴くとアンプ部の出来が良いこと(=周波数特性の良いこと)が分かります。そして走行系の安定感が魅力です。)


ジャズのアルバムのミュージックテープ、デイヴ・ブルーベックの「TIME OUT」を聴いたとき、ピアノソロの静かな場面でヒスノイズが比較的大きめに聞こえましたが、これはカセットテープのヒスノイズというより、演奏を録音したオリジナル音源に含まれるヒスノイズの割合が多い模様で、曲間になるとヒスノイズも静かになりますし、上記以外の曲ではノイズレベルは低く感じることのほうが多いです。
この「TIME OUT」は1959年の録音ですが、このミュージックテープに収められている音のクオリティは高いです。多くの方に聴いていただきたい作品です。

(下記画像:D.ブルーベック「TIME OUT」。)

ここ40年ないしは30年ほどの時間の中で、スタジオ録音のデジタル化によるマスター音源のノイズ減少、ミュージックテープ製造プロセスへのデジタル機器導入による品質向上とノイズ減少、そしてカセットテープ自体の高性能化と低ノイズ化、等が相まって、ミュージックテープは、きちんとした製造元の製品なら、ドルビーオフでも問題ないほどの品質・音質が確保できるようになってきた印象です。

ミュージックテープの製造にかかわるこれらの進歩は、今となってはなかなか目立たず、注目もされませんが、改めてそれらの歴史や背景に思いをめぐらせて、手持ちのラジカセでミュージックテープを再生してみるのも一興かもしれません。

お手持ちの高性能なカセットデッキでの高品質な録音とも、ちょっと違う体験ができるのではないかと思います。

<向実庵からのメッセージ>