2020/07/07 12:20
(最終更新:2024.1.28)
以前ヘッド消磁に関する話題を投稿しましたが、今回はそれに近いところで、カセットデッキやラジカセのヘッド周りのクリーニングの話題です。
ベテランの方ならよくご存じの内容ですが、現在の商品事情も含めてご紹介したいと思います。
〇カセットデッキやラジカセの走行系は定期的な清掃が必要
カセットデッキやラジカセの走行系は、録音・再生のたびにテープがヘッドやキャプスタン、ピンチローラーなどに接触します。テープが接触する部分には、少しずつ磁性粉が付着します。
長時間使用して汚れてくると、ヘッドは本来の録音・再生の性能を発揮できなくなり、音がこもる、雑音が入る、録音済みテープへの録音では前の音が十分に消えない、等の問題が起こりやすくなります。
また、キャプスタン(キャプスタンバー)の役割は一見わかりにくいですが、ピンチローラーによりテープをキャプスタンに密着させることで、4.76cm/sの定速走行と走行の安定性を維持しています。
そのため、キャプスタンやピンチローラーが汚れるとテープの走行安定性に支障が出て、回転ムラが増える、テープが絡まる・巻き込む、などのトラブル発生の可能性も高くなります。
キャプスタンとピンチローラーもヘッドと同様、常にきれいな状態に保つ必要があります。
カセットデッキやラジカセの走行系は通常の使用なら40時間程度に一度のペースでクリーニングをするのがよいですし、ヘッド周りや走行系にゴミや汚れが疑われる時は、それ以前でも速やかにクリーニングするのがよろしいと思います。
また、大切な録音の前にも念のためクリーニングしておくと安心して作業に集中できます。
〇微細な汚れが影響を及ぼすケースも (2021.4.22追記)
最近も、カセットデッキで録音前のキャリブレーション(バイアスとレベルの微調整)を実行中、片チャンネルのみレベルが下がる現象が起こりました。ヘッドを見ても特に汚れは見えませんが、念のためと思いヘッドの清掃を行うと、きちんと所定のレベルが出るようになりました。
微細なごみや汚れが意外な影響を及ぼすケースもあることに改めて気付きました。
〇クリーニング用品は今も入手可能
ヘッド消磁器と異なり、クリーニング用品は今も製造されており、新品が入手可能です。
簡便に済ますならクリーニングカセットが便利ですが、隅々まできれいにしたいなら、ヘッドクリーニング用+ピンチローラークリーニング用の2液+綿棒のセットを使うのがおすすめです。(下の写真例:筆者手持ちのクリーニングキット)
(2024.1.28:クリーニングカセットの記事更新)
また、クリーニングカセットは、「乾式」タイプが復活し、、湿式・乾式兼用タイプとともに流通しています。
(下図:湿式として使えるカセットタイプのヘッドクリーナーの一つ、 QC-300)
(向実庵ではナガオカトレーディングのQC-300「ウォッシュアッププロ7」をカセットタイプのヘッドクリーナーとして取り扱っております。また、オーム電機の乾式タイプの製品・AV-M6139も取り扱いを開始しました。)
カセット型のクリーナーは、特にカセット式のカーステレオが現役の方には便利だと思います。
また、コストパフォーマンス重視の方および仕上がり重視の方にはより丁寧に清掃できる2液+綿棒セットがお勧めです。
もし「クリーニングカセットか、2液+綿棒のセットか」という二択なら、カーステレオのように綿棒が届かない場合以外は「2液+綿棒のセット」をお勧めします。
〇2液方式のクリーニング・おさらい
それぞれ、クリーニング液を綿棒に少量含ませ、対象となるヘッドやキャプスタン、ピンチローラー等を清掃します。
(必要に応じ、仕上げに別の綿棒で乾拭きしてもよいです。)
*ヘッド用クリーニング液
ヘッド用の液は、録音・再生ヘッド、消去ヘッド、キャプスタンといった金属部分やテープガイド部の清掃に使います。
先述の通り、キャプスタン(キャプスタンバー)は、ピンチローラーと一体となってテープを定速走行・安定走行させる要の役割を果たしています。そのため、キャプスタンもヘッドと同様にクリーニングしましょう。
ラジカセなど再生ボタンを押下しないと回転しないキャプスタンのクリーニングはやや面倒ですが、全周がきれいになるよう、必要に応じ、綿棒を折ってアングルを付ける等して清掃しましょう。
*ピンチローラー用クリーニング液
ピンチローラー用は、名前のとおりピンチローラー等ゴム製品の清掃に使います。
停止状態でピンチローラーを清掃する場合、綿棒を横方向に動かすとローラーも回ってしまい全周を清掃できないので、綿棒を奥から手前方向に動かし、なおかつ位置を少しずつ変えて、ローラー全周を清掃します。
ピンチローラーはテープの磁性体面に密着しますので、清掃作業のインターバルが開くと結構汚れます。
1回清掃すると綿棒が何本も茶色くなるかもしれませんが、その分効果的に汚れが落ちたことになります。
たびたび清掃しているとクリーニング液に付属する綿棒では足りなくなりますが、その時は100円ショップで購入しましょう。200本入り1パック購入すれば数年もつと思います。(下の写真例:ダイソーの綿棒)
そして、清掃の後は、走行系が完全に乾くまで数分~10分ほど待ちましょう。
上記のように、アナログ機器はメンテナンスも重要ですが、その音にはデジタル機器と異なる味わいがあります。
往年の名機と呼ばれるカセットデッキやヴィンテージラジカセをお持ちの場合は特に、メンテナンスを気遣うと、良い音を長く楽しめると思います。
<向実庵からのメッセージ>