2020/05/28 14:12

(2021.4.30:文末に加筆。)

近年、新品を販売してほしいものの一つに「ヘッド消磁器」があります。

磁気テープに接するカセットデッキやラジカセのヘッド部は、使用していると磁気を帯びます。
ヘッドが磁気を帯びる(=帯磁する)と、
・再生時に高音域が出にくくなる、
・再生したテープにノイズが載るなど悪影響を与える、
・程度のひどい帯磁があるとテープに記録されている情報を消してしまう、
等と言われています。

特に、3ヘッドデッキの再生ヘッドは、
テープから磁気を受け続ける一方なので、
定期的に消磁を行う必要がある。
その頻度は使用50時間毎に1回程度が目安。
などと習ってきました。

ヘッドを消磁すると(それまで帯磁がはなはだしければ)、
高音の抜けや、ダイナミックレンジの広さなどが復元して、
見違えるようにすっきりする、そうです。

そんな知識から、初めて3ヘッドデッキ(中古)を入手した際、
「ヘッド消磁器も欲しい」と量販店を探したのですが、
既に販売されていませんでした。

仕方なくネット上をあちこち探して
新古品を入手しました。

一方、2ヘッドのカセットデッキやラジカセは、
録再兼用ヘッドであり、
録音の際に交流バイアス電流を受けることで消磁になる、なので
消磁が必要だと思う場合は録音すればよい。

といった記事を見た記憶があります。
本当に2ヘッドだったらそれでいいのかな?
いささか疑問な気持ちで過ごしてきました。

今回、このあたりも含めて調べたところ、
「2ヘッドデッキの録再ヘッドが録音の際に交流バイアス電流を受けるのは事実だが、
この交流バイアス電流に一定の強さがないと消磁の効果は十分ではない。
きちんと消磁するならやはりヘッド消磁器を使うべき。」

そのような意味の技術者の方の意見もありました。

また別途、汎用型(クツワムシ型?)の消磁器の実力を、
帯磁した釘で実験する動画を投稿されている方もおられたので、
観てみますと、実験の結果、釘の完全な脱磁はできないが
帯磁を弱めることができる、という結論でした。
(磁気テープによるヘッドの消磁にはこの程度でも十分、
 ということなのでしょう。)

いっそのこと、現在販売されている工具などを対象とする消磁器が、
オーディオに使えないかと思い、ネット上で、いくつかの製品を見てみたところ、
問題なのはサイズのようです。
「大きすぎでカセット部に入らない。オーディオ専用の製品を使うべき」
という意味のユーザーからの投稿もありました。

経験上、手持ちのデッキやラジカセでヘッド消磁を行った結果、
目に見えて音がよくなった
=そこまでひどく帯磁させていた、
という経験はありません。消磁したら、
ちょっと高音域の抜けが良くなったかもしれない、という程度です。
しかし、ヘッド周りのクリーニングと一緒に消磁しておくと、
精神衛生上よろしい、というメリットはありますし、
持っていれば、いざとなればこれで消磁できる、という安心感もあります。

〇暫定的なまとめ
「必要性や需要が完全にゼロではないけれど、新品はもう作られていない。」ヘッド消磁器はそういった悩ましい製品であるため、このブログの結論も割り切りが悪くなってしまい恐縮です。

ヘッド消磁器を持っておらず、でも現在使っているカセットレコーダーが2ヘッドのカセットデッキ、もしくはラジカセなら、ある程度再生時間が伸びたら、ある程度、消磁効果が期待できる「録音」をすることがお手軽で、ある程度効果のある対策といえそうです。

3ヘッドのカセットデッキを所有されているなら、なんとか頑張って、ヘッド消磁器を探し出して入手するのが安心できると思います。
オークションサイトや中古品売買のサイトでは、少数ですがヘッド消磁器が現在も流通しています。
そのようなルートでの入手をご検討されるとよろしいと思います。
(当店で販売するときには、もちろんお知らせいたします。)