2020/05/21 12:15

(2021.5.28・一部加筆)
〇音楽によってオーディオに要求されるスペックは異なります。カセットデッキも同様です
音楽のジャンル、もしくは演奏形態によって、オーディオに要求されるスペックは結構異なります。

見落とされがちかもしれませんが、カセットテープを録音・再生するカセットデッキの必要スペック(特に走行系)も、
対象とする音楽のジャンルや演奏形態によって、異なると思います。

店主は、長年、器楽曲をカセットテープで聴く際、
スペックの低いレコーダーやプレーヤーの「回転ムラ」による音質の劣化に苦しんできました。

「スペックの低い」と書いてしまいましたが、そんな機種でも、おおよそロックやポップスなど、ヴォーカル中心の音楽は問題なく録音・再生できることが多いです。しかし、
管楽器やピアノなどの活躍する器楽曲は、回転ムラが悪さをして音が揺れる・震える、音が濁る・ささくれる(?)
等、再生音の劣化が目立ち、最悪の場合、聴いていられなくなります。

そのような経験があるので、新たに(もしくは改めて)、カセットテープで音楽を聴くことを始める方が、
音楽ソースとして器楽曲も楽しみたい、そうお考えなら
スペック値、特に走行系のスペック値の高いカセットデッキを購入されるようお勧めしたいです。

以下にご注意いただきたい項目を並べてみます。

◇走行性能:
ワウ・フラッターは0.04%(WRMS)程度より少なければ、回転ムラに苦しむ可能性が俄然減ると思います。
0.03%(WRMS)以内なら理想的だと思います。

◇周波数特性:
現在も新品が入手できるノーマルテープで高音域が15KHz以上確保できること。

ノーマルテープでCD並みの20KHz近くまで確保できればそれに越したことはないですが、
FM放送レベル(低音域50Hz~高音域15KHz程)もしくはそれ以上を確保できる機種なら、カセットの音の良さは味わえると思います。

1980年代のCDの普及以降、ノーマルポジションを含むカセットテープの性能が向上し、カセットデッキも周波数特性の要求水準が上がりました。ですのでそれ以降のデッキなら、およそノーマルテープでも高音域まで伸びやかな音質で録音できると思います。

◇ノイズリダクションシステム:
ドルビーB,C 等を使った録音・再生ができること。

ノーマルテープ主体の使用を前提とすると、ダイナミックレンジの広い音楽ソースを録音する際、
弱音部分でヒスノイズが目立つのでノイズリダクションが欲しいです。
また、現在も流通するミュージックテープにも、ドルビーB入りはまだまだありますので、
ドルビーB程度はあった方が便利です。

さらに以下は、走行系以外の仕様ですが、できれば(、というかなるべく)欲しい機能です。

◇バイアス微調整機能:
あれば、テープの周波数特性を微調整でき、性能を十分に引き出せます。
加えて3ヘッド構成(後述)のデッキなら通常はモニター機能がありますので、録音中にテープの再生音を聴きながらバイアス値を確認・微調整できたりもします。

◇3ヘッド構成:
録音と再生のヘッドが独立して、録音しながらテープの再生音を聴くことが可能な機種ですと、
リアルタイムで録音状況が分かり、時間効率がよいです。
また3ヘッド機種は、デュアルキャプスタン構成をとっていることも多く、走行安定性が増します。

◇ドルビー HX PRO(もしくは前世代のドルビーHX)
ドルビー HX PRO はテープレコーダーの録音時に高域特性を改善するシステムです。
ドルビーHX PRO は録音時のみの処理で、音声信号の高域成分を検出し録音バイアス量を 1 ms 毎に制御することで高域特性を改善する機能があります。
録音時のみで処理が完結するため、録音済みカセットテープをドルビー HX PROを持たないデッキやラジカセ等で再生してもその効果は有効です。

前出のバイアス微調整機能を搭載するデッキにドルビー HX PROが搭載されている場合、バイアス微調整を行わないときはドルビー HX PROが働き、代わりに高音域の特性を改善してくれる製品もあります。

バイアス微調整機能を持たないデッキでも、ドルビーHX PRO があれば、カセットテープへの録音の際、高音域特性を改善してくれますので、あると便利な機能といえます。

〇欲しいデッキは中古品から探す必要がある
非常に残念なのは、上記の要件を満たすカセットデッキが新品で手に入らないことです。
購入しようとすると、中古品の中から探すことになります。
新製品が供給されないことは、カセットテープで音楽を楽しむことが、この先尻すぼみになることにつながります。

TEAC、テクニクス(パナソニック)、D&Mホールディングスといった今もオーディオに力を入れる企業には、
往年のような高性能なカセットデッキを、何とかして再び世に送り出していただきたいところです。