2025/06/01 12:43
ネットショップ向実庵店主
舩生 好幸
〇自分用および情報収集の目的で現行ラジカセを購入
10年ちょっと前、CDラジカセを続けて何台も購入して聴き較べた時期がありましたが、以降はそういった取り組み?も行う機会が減っておりました。
気づけばソニーやパナソニックから出ていたCDラジカセの上級機種は販売終了となり、その一方で2024年にはFIIOよりポータブルプレーヤー・CP13が登場したように、カセットテープオーディオ機器にも変化が生じています。
そこで、新しい学びも得なければと、自分用および情報収集の目的で、前から気になっていたORIONの小型ラジカセを購入することとしました。
〇ORION SCR-B3について
SCR-B3は、ドウシシャの「ORION」ブランドで「俺たちの青春ラジカセ」として展開されるレトロ調ラジカセ3機種のうち、最も小さいサイズの製品です。

(画像:ORION SCR-B3)
フォルムは昭和の頃に三洋電機からリリースされた「U4」を思わせるコンパクトなステレオラジカセですが、Bluetooth接続再生機能を搭載し、USBメモリーやmicroSDカードに収録されたMP3データが再生可能です。
また、AM/FMチューナーはアナログスケール方式ながら内臓されるのはデジタルチューナー。
さらに、メーカーサイト等に明記されていませんがクリアな音質や後述する理由から、アンプ部にもデジタルアンプが採用されていると思われます。
レトロ調の外観ながら、デジタルオーディオの機能及び成果が積極的に採用された製品といえます。
〇最初のインプレッション
5月後半の平日、量販店から本製品が届きました。
たまたまその時、パナソニックのCDラジカセ・RX-D47Sを試聴していたこともあり、使用していたいつものモニター用ヘッドフォン(オーディオテクニカATH-A2000X)で、再生していた音源(UR-60・編成の大きな器楽曲=吹奏楽コンクール課題曲の私的なセレクション)をそのままSCR-B3でも聴いてみました。
音質は、RX-D47Sが中音域にポイントのある音質に対して、ワイドレンジでした。
引き締まった低音の上に高音まで伸びやかな印象の音質です。小型の製品からメリハリのある音がいきなり出てきて驚きました。
〇デジタルアンプ採用と推測
ドウシシャのサイトを参照すると、「俺たちの青春ラジカセ」シリーズは、本製品SCR-B3の前に、中型のSCR-B7がリリースされましたがこの製品はデジタルアンプ搭載です。
また、SCR-B3の後には大型のCDラジカセSCR-B9がリリースされ、こちらもデジタルアンプが採用されています。
SCR-B3についてはどこにも記載はない模様ですが、そのクリアで高音域まで伸びやかな音質や、近年は小型化やコストパフォーマンス良好なことを考えると、この製品もデジタルアンプで駆動されているものと思われます。
また、ヘッドフォンでは、(相対的にスピーカーよりテープの回転ムラは感じにくいものですが、)回転ムラが目立ちやすい音源のはずが気にならず、こちらもかなり驚きました。
1万円強の製品でこのようにバランスの良い音質や相応に走行安定性が確保されているとは予想していなかったので、かなり驚いた次第です。
〇さらに聴き続けた際のインプレッション
上記はヘッドフォンによる印象でしたが、そのあとでラジカセ本体のスピーカーからも音を出してみました。
スピーカーからの音質は、筐体が小さいこともあって、高音の伸びやかさに対して、低音の調整つまみを一杯にしても不足気味に感じました。
(但し、まだスピーカーの慣らし込みはできていないので、今後エイジングが進むと印象が変わる可能性もあるかもしれません。)
そこで、このブログ執筆時点では、ヘッドフォン(前出のATH-A2000X、またはATH-A900X)、或いはアクティブスピーカー(ソニー・SRS-RS50・20年以上前の省スペース型のスピーカーシステム)でモニターをすることとしました。
本体のスピーカーよりも、これらのほうが、SCR-B3のアンプ部の良さを引き出せる印象です。
以降は主にアクティブスピーカーから音を出して試聴したレポートです。

(画像:ソニー・SRS-RS50・アクティブスピーカーシステム。この形態でもステレオです。基部に低音用スピーカーも内蔵。)
SRS-RS50は、ソニーらしい明るくクリアな音質ですが、持ち運びもできる小型サイズの製品ゆえ、オーケストラなど大編成の楽曲よりも、小編成で演奏されるポピュラー音楽に似合う音質です。
器楽曲の再生では、スピーカーから音を出すと、ヘッドフォンでは気になりにくい回転ムラが気になる場面も増えますが、それでも現在のラジカセの中では出来が良い部類だと思います。
繰り返しですが1万円強の価格を考えれば相当に良い出来であると思います。
また、このラジカセとポータブルカセットプレーヤーと比較しますと、こちらの方が電源や筐体にも相対的に余裕があるといえます。
周波数レンジや走行安定性の面で据置型製品の強みは明確であると感じました。
〇気になった機能など
一点、メーカー様にはもう一工夫していただきたいと感じた点がありました。
テープ再生中、曲間の無音部分ではノイズ低減目的で自動で音量を下げる機能が働きます。
しかし、現状ではセンサーの感度設定がやや粗いようです。
とくにヘッドフォンで聴く際、
・曲の冒頭が、フェードインまたは小音量で始まる場合、本来の音量に復帰するのに時間がかかり、微妙に不自然。
・曲の最後のフェードアウトで、まだ曲が終わっていないのに自動で音量を下げてしまい、演奏終了が若干であるが早すぎる。
・曲中の無音の場面でも機能が働き、ここでも本来の音量に復帰するのに時間がかかり、微妙に不自然。
以上のような現象が感じられました。
もう一段階、きめ細やかなコントロールをお願いしたいところです。
しかし、この機能を発展させれば、もしかすると新しいノイズリダクションシステムや、
dbxやADRESのようなダイナミックレンジエクスパンションシステムに発展する可能性もある気がします。
今後は、AIの応用なども視野に、研究を進めていただきたいところでもあります。
〇まとめ
自分用および情報収集の目的で、ORIONの小型ラジカセ購入した次第ですが、
ヘッドフォンで聴くと、カセット部の走行安定性及び再生音が想像以上に良くて驚きました。
スピーカーで聴いても、現行のラジカセとしては、カセット部の走行安定性はかなりのものだと思います。
据置型でもよい人には、私的には、キャパシティや電源容量などの余裕も踏まえ、ポータブルプレーヤーよりお勧めできます。
そしてさらには、よりHi-Fiな音質及び性能のカセットテープオーディオ製品が、今後続々登場することを祈りたいです。